北朝鮮が、国連安全保障理事会の制裁決議に反して石炭を密輸している問題で、ロシア極東サハリン州南部のホルムスク港を拠点にした具体的な制裁逃れの手口が明らかになった。


【ニューヨーク=上塚真由】北朝鮮が、国連安全保障理事会の制裁決議に反して石炭を密輸している問題で、ロシア極東サハリン州南部のホルムスク港を拠点にした具体的な制裁逃れの手口が明らかになった。安保理北朝鮮制裁委員会の専門家パネルの報告書で、密輸ルートを詳述。積み荷の入れ替えや産地偽装などを組み合わせており、安保理関係者は「制裁を強化するたびに、手口を巧妙化させている」と指摘している。

 北朝鮮の主要産品である石炭は2016年に規制対象となり、昨年8月に輸出が全面的に禁止された。

 だが、専門家パネルが調査したところ、昨年8月以降も、北朝鮮が石炭を密輸した疑いがある事例は23件に上った。輸出先はロシア(7件)、中国(5件)、ベトナム(9件)、韓国(2件)だった。

 主な手口は、ロシアなど第三国の港に北朝鮮産の石炭を輸送し、港でいったん荷降ろしした後、書類上で産地を偽装。その後、別の船が同じ港に入港して石炭を積み替えて、各国に輸出していた。報告書では、「いくつかの船は、石炭が積み降ろされた港に数日後に入港し、出港時には、重量が増えていた」と不自然さを指摘している。

 報告書によると、ホルムスク港には昨年8月から10月にかけて、少なくとも北朝鮮船籍3隻とトーゴ船籍1隻が7回にわたって北朝鮮産の石炭を輸送した。これらの4隻は、北朝鮮の元山や南浦、清津の港から出航していた。

 その間、パナマ船籍が9月21日に、シエラレオネ船籍が10月5~6日にそれぞれホルムスク港で石炭を積み替え、韓国まで運搬したとみられる。

 安保理関係者の間では、中国当局が、北朝鮮からの石炭輸入の取り締まりを強化したため、北朝鮮が、ロシアの密輸ルートを新たに開拓したとの見方もある。北朝鮮産をロシア産と偽装するケースは横行しており、中国当局は8月、山東省の日照市、青島市の港では、ロシア産の石炭はすべて輸入を禁止すると公表した。

 ロイター通信は今年1月、日本にも、ロシアの港を経由して北朝鮮産の石炭が輸入された疑いがあると報じた。だが、安保理関係者によると、日本に輸入された石炭は、ホルムスク港以外の港から運搬されたもので、北朝鮮産とは確認されず、報告書には盛り込まれなかった。
【日時】2018.2.11 23:21
【提供】産経ニュース